卒業式
2008/3/4
3月3日、日本の漆芸技術の基礎を教える、石川県立輪島漆芸技術研修所で卒業式がありました。私の長男がそこを卒業するため、参列してきました。
彼は高校時代にフィンランドに留学していましたが、その一年間で触れたヨーロッパ文化と日本文化を比較し、日本人として、我が国の伝統工芸の分野に身を置きたいと考え始めたそうです。その後、大学でフィンランドの学校教育制度や価値観を研究し、教育の中に自国に伝わる文化を取り入れる必要性を感じたのかも知れません。そして日本に於ける伝統文化の代表ともいえる漆芸に興味を持ち始めたのもその頃だったのでしょう。一昨年大学を卒業すると共に、石川県輪島市にある漆芸技術研修所を受験し、入学しました。
石川県立輪島漆芸技術研修所は県立とはいえ、活動は文化庁の重要無形文化財技術養成事業であり、いわば日本の伝統技術の後継者育成事業を担っています。その研修所が、今年で開所40年を迎えました。卒業生の数は、現在640人を超えているそうです。1月には40周年記念事業として、40年間に育った若者達の卒業作品を一同に並べる展覧会を開催しました。
この研修所開設にあたっては石川県や輪島市がバックアップし、当初は私立研修所だったものが、昭和47年から石川県に移管され、現在に至るまで石川県が前面に立ち運営をしています。
開所当初は、県内出身者が多かったものと思われますが、現在では全国から希望者が集まり、日本の伝統漆芸技法のみならず、デザイン、絵画から茶道や書道に至るまで、幅広く若者達を教育しています。
講師陣も充実しており、全国から、いわゆる人間国宝の先生が出向いて直接手ほどきをされているのをはじめ、地元の各専門の漆芸作家の方々が何十人も指導に当たっています。この恵まれた環境は日本一なのではないでしょうか。
そしてこの研修所40年の歴史は、卒業生から小森邦衞先生のような人間国宝を生み出すに至りました。また現講師の多くも研修所の卒業生が名を連ねる等、後継者が着々と育っています。開所時の松田権六の言葉「技は人なり」という言葉が、40年経っても研修所の目指す価値観となって、語り続けられているのです。
これらのことは40年も前に、松田権六先生をはじめとする漆芸関係者による、後継者育成問題の先を見越した活動の結果の現れと考えます。
今年次々と卒業する若者達が、そのまま漆芸活動を継続するには厳しい社会状況ですが、本物の漆に接することができたということが、必ずや今後の人生に活かせるものと期待しています。

