木曽路
2008/4/4
3月の木曽地方は、標高800m辺りでは春まだ浅く、雪間にフキノトウが出始めたところでした。このフキノトウの天ぷらがこの時期のごちそうです。これをひとつふたつ載せた朱漆塗りの椿皿が供せられる・・・。美しい春の彩りですね。添えられた塩をちょっとつけて食べる味は、ほんのり苦味を感じる「大人の味」といったところでしょうか。
閑話休題。木曽は材木の宝庫で、檜(ヒノキ)、椹(サワラ)、翌檜(アスナロ)、鼠子(ネズコ)、高野槙(コウヤマキ)は「木曽五木」として有名です。中でも檜は木材の王様といっても過言ではなく、法隆寺をはじめとして古代の建造物はほとんどが檜材で建てられ、現在まで朽ちることなく伝えられています。先日、その檜材を買いに出かけて来ました。
檜は「植えて千年、切って千年」と言われるように、樹齢は千年を優に超え、切って加工した後も千年以上朽ちることなく、長く生きる木材です。先程例にあげた法隆寺は、建築されてから1300年以上もの長い年月、風雨にさらされながらも、その姿を今に伝えています。もちろん木材ですので、環境によっての差はありますが。そして漆という樹液も、環境さえ整っていれば、千年どころか二千年以上保てる材料です。したがって、この長持ちする漆を塗る材として檜材を使用することは、最強の組み合わせと言えます。
檜は、昔から紀州檜と備州檜が有名です。紀州材は今の紀伊半島に育つ材で、備州材は木曽地方に育つ材です。紀州材は紀伊地方の高温多湿な夏、秋の台風、冬の寒さ等の気候の影響により木目は粗いのですが、粘り強く、建造物の柱材等に最も適した木材となります。一方の備州材は、長野の高地に育つため、夏冬共に寒冷地という条件下にあります。そのため育ちが遅いものの、夏目・冬目の木目の差が少なく、木目は細かく詰み、柔らかく素直、というのが特色で、調度・工芸品等の木地材に最も適しています。
それぞれの材は江戸時代には留山などとして守られ、特に備州檜は、今でも樹齢数百年という檜が残されています。それでも現在は樹齢五百年を越える材は少なくなったと言われています。最も有名なのは赤沢地域の檜で、国有林として極力伐採が控えられ、檜の森が守られています。その森を歩くと、木の生気にあふれており、日本一(?)の森林浴ができます。
私は定期的に木曽に出向き、素直で木目の詰んだ乾燥材を買い求めますが、檜材の間を歩くだけで、その香りに頭がスッキリとします。
今回購入したこの材に漆を塗り、蒔絵を施し、作品に仕上げていくのが楽しみです。

